これから挙げるマンガは、私がOKもらって持っていた『ドラえもん』や『エスパー魔美』や『ウメ星デンカ』などではなく、父親の部屋にあったのを勝手に読んでたものです。父もまさか娘がこっそり読んでるとは思ってなかったかもしれないけど、今思えば、こんなもん、小学生の目の届く場所に置いといたらアカンがな!というマンガだらけ。「手塚&藤子以外禁止」という教育方針はなかなか面白いとは思うけど、片手落ちですよ父よ…。それとも作戦か(何のだ)。
ほとんどの作品は小学5年生前後で読んでいるはずだけど、なんせ「トラウマンガ」なので、強烈に刻まれた記憶がある反面、他のことが曖昧になっているかもしれません。
とにかく、個人的に一度ちゃんと整理したかったのでまとめてみました。ぜんぶ実家にあるので、ほぼ記憶をたよりに書いてます。
■藤子・F・トラウマ
主にSF短篇集が怖くて怖くて。藤子不二雄は、Aの「ドーン!」な怖さが目立つけど、本当に怖いのは可愛い絵柄でニコニコ狂気のFだと思うのです。F先生のSF(すこし・ふしぎ)はトワイライトゾーンのような世にも奇妙な物語のような。『コロリころげた木の根っ子』
横暴な夫に仕えるおとなしい妻は、消極的に、だけど確実に夫の息の根を止めるつもり満々だった…。階段にウィスキーの瓶を置いてるトコロを見つけてしまうシーンがトラウマ。あと、このマンガのせいで「まちぼうけ」が怖かった。小林賢太郎のお芝居『うるう』を見て、ようやく名曲認識できるように。「まちぼうけ」克服までに数十年を要するとは、当時のわたしは知る由もない。
『ヒョンヒョロ』
ヒョンヒョロ〜!って落ちてくるアレを探すウサギ型宇宙人が可愛いんだけど狂っててトラウマ。誰もいなくなった世界も怖い。
■手塚トラウマ治虫
父の本棚には、一応『鉄腕アトム』とか『サボテン君』とか『ワンダー3』とかもあった、ということも言い添えておきます。そしてなぜか『ブラック・ジャック』『火の鳥』『ブッダ』は揃えていなかった(わたしは大人になってから読みました)。突っ込みどころの多すぎる本棚…。『I.L』
棺桶に入って出てくれば、どんな女にでもなれる美女I.Lのお話。駄作を作った映画監督が、ドラキュラに姪っ子としてI.Lを紹介され、この世を映画に見立てていく。I.Lが一度クッソババアになって出てくるのがトラウマ。あとやたらハダカ。
『やけっぱちのマリア』
おしべとめしべが…みたいなまどろっこしいのはスッ飛ばして、人格を持ってしまったダッチワイフが「赤ちゃんはどこから来るの?」みたいなことを言い出す性教育マンガ。ダッチワイフのなんたるかを知ったのは、これ読んでから10年ちかく後でまさに10年殺し。普通の人形だと思い込んでたくらいだから、性の話をするとは言え、いかがわしい感はなかったんだと思う。とにかく読んでる時は平気だったけど、後からいろいろ知ってトラウマ。
心を持ったダッチワイフのモチーフは、その後業田良家『空気人形』に受け継がれてますね。
『ユフラテの樹』
ユフラテの樹の実を食べると超能力と万能感を得ておかしなことになるんだけど、それをえげつなく求め奪い合う人間たちのお話。タイトルロゴがゆらゆら震えてて怖かったのでトラウマ。
←コレ!このタイトルロゴ!
『鳥人大系』
笑い飯がネタにするまでは「鳥人」は「トリジン」ではなく「チョウジン」で、「首のところに鳥と人との境目」なんかなかったのです。これは鳥をまるっと擬人化したマンガ。鳥も擬人化されて動き出すとヒエラルキー作るし宗教作るし、めんどくさいことこの上ない。同類を食べちゃいけないという倫理と美味しそうな小鳥ちゃんとの間に引き裂かれそうになる猛禽類の話がかなり残酷だった気がします。食べちゃダメだ!でも美味しそう!きゃー鳥殺し!
『ペックスばんざい(フースケ)』
男性器のカタチをした生き物と、女の尻のカタチをした生き物をペットにしちゃう表題作がトラウマ。何考えてんだ手塚。
『百物語』
玉藻の前が出てきたような出てこなかったような。たぶん出てきたような。主人公のお侍が女の子妖怪・スダマちゃんに手伝ってもらってこの世の夢を叶えたあと切腹。そのタマシイをもらう約束してたスダマちゃんは、結局情にほだされてを解放してあげちゃう。あれだ!今書いてて気づいたけどこれってファウストだー!(こういうのがあるからたまらん)
切腹シーンが痛そうでトラウマ。今でも映画の切腹シーンは怖くてなかなか見れない。
『人間ども集まれ!』
主人公の精子とってクローン作ったら無性人間ができたので、それ使って戦争させるっていう。ジャンゴ・フェットか!っていう(今思えば)(こっちのが先だけど)。そして戦争をショーとして楽しむ人間の残虐性がトラウマ。
『鉄の旋律』
マフィアにリンチされて失った両腕の変わりにつけた義手が、寝てる間に勝手にジリジリと動き回るのがトラウマ。
『ミクロイドS』
虫を擬人化したマンガ。蝶のアゲハが可愛かった記憶あり。虫の大群が街を襲い、車のフロントガラスにバチバチ当たるのがトラウマ。ヒッチコック「鳥」の虫バージョン。鳥より虫のが怖いわ。喉に虫が大量に詰まって死ぬのも嫌だ。
『ザ・クレーター』
短篇集。月(?)のクレーターに落ちてワイヤーで宙吊りになった宇宙飛行士が、変なガスのせいで時々生き返ってしまって永遠に死ねないのがトラウマ。もうー、なんでそんな話描くかなー。
『時計じかけのりんご』
元ネタが『時計じかけのオレンジ』であることを知るまでに数年、そして実際に『時計じかけのオレンジ』を観るまでに数十年を要すことになるとは、当時のわたしはこれまた知る由もない…。ドイツが誇る猟奇殺人者、デュッセルドルフの吸血鬼、ペーター・キュルテンの半生を描くマンガ。強姦殺人&放火してから平然と帰宅して嫁を抱く主人公にトラウマ。
私が猟奇殺人ものアリになったのはこれのせいかもしれない。
『紙の砦』
作者の経験を元にした太平洋戦争下と戦後すぐのお話。学校に焼夷弾が落ちてあこがれの女学生が黒コゲになるのがトラウマ。
←この表紙のが実家にあるのですが、古書でけっこういい値なの値!
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トラウマだなんだと申しておりますが、結局ぜんぶ好きなマンガです。手塚御大もF先生もずっと大好きな漫画家。ただ、感受性豊かな幼少期にうっかり読んでしまったので、ひょっとしたら人格形成に影響を与えたかもしれないねってだけで。
そして、もしかしたら本当にトラウマなあまり記憶から消してるマンガもあるかもしれない。今度実家に帰ったら父の本棚を漁ってこようとおもいます。
余談ですが、父はまいっちんぐマチコ先生を押入れの天袋に隠してたんですわ(当然見つけ出してる私)。こんなにえげつないマンガをほりだしといて、まいっちんぐは禁制品扱い!わからない…、オトンの真意がわからない!